【第5回JEAエンゲージメント協会】「攻めのダイバーシティは高信頼性組織 (原発管理チーム等)から学べ」開催レポート

第5回JEAエンゲージメント協会は電通ダイバーシティ・ラボ代表伊藤義博さんをお招きしました!

伊藤義博プロフィール

電通入社後TV媒体、数々のクライアント企業担当を経て、電通総研研究所主席、ソリューション
開発センター(現職)。

2011年に電通ダイバーシティ・ラボを設立し事務局長から現在の代表へ。

電通ダイバーシティ・ラボは障害・ジェンダー・多文化・ジェネレーションなどの人々の多様性
を鍵として、社会課題と企業課題を一緒に解決することを目指しています。

今回のテーマは
「攻めのダイバーシティは高信頼性組織(原発管理チーム等)から学べ」
~ダイナミックに成長する組織に必要なJust Cultureリーダーシップとアンコンシャスバイアス~
です。
4つのテーマからエンゲージメントとダイバーシティの関係を話してくださいました!

テーマ1 そもそもダイバーシティとは?

ダイバーシティを考える時に基本となる領域は4つあるそうです。
障害、ジェンダー、多文化、ジェネレーションです。
このダイバーシティの領域で考えると日本の総人口を約1億2700万人のうち、なんど52.9%がなんらかの課題を持っていると推定されます。
2006年より以前は障害は、例えば足が不自由という「個人モデル」だったのが、2006年の国連障害者権利条約が発効されたことを機に、足が不自由な人は車イスがあれば移動ができる、だがそれすら出来なくしているのは’段差’という社会が原因だという「社会モデル」に変わってきています。つまり障害の原因は当事者の内側にあるのではなく、障害のある人が働けない社会の仕組みや環境の方に問題があるという考え方です。
例えばあなたはあるレストランの接客スタッフとして働いているとします。
ある日、足の不自由な方がレストランに来店されました。
あなたならどうやって案内しますか?

研究会の中でこの質問を受講者の方にしたところ、「入り口近くの席をお勧めし、店の椅子を外してご案内する」という答えが返ってきました。多くの人がこう答えますよね。
でも、伊藤先生が実際に障害者に話を聞いたところ、「人によって障害の程度が違います。1番ベストは「お客様、入り口近くの席もご用意できますが、いかがなさいますか?そして当店の椅子にお掛けになりますか、それともご自分の車イスでお食事されますか?」と聞いてくれることです。」という回答だったそうです。足の不自由な人は入り口の方がいい、車イスからは立ち上がらないだろうという思い込みで多くの人が対応しがちですが、違う人もいること、自分の考えは思い込みではないか、という考えをもって、他者と触れ合いコミュニケーションすることが重要なのです。

テーマ2 企業が直面する課題

市場の多様化が進み、法律や制度が変化しています。
それにともなって社員も変化をしています。
例えば、寿命が延びたことで人生100年時代に突入し、生き甲斐や経済的制約が出てきます。
価値観が変わり、男性が家事に積極的に関わるようになったり(イクメン)、介護をするために時短で働く社員も出てきています。
市場の変化をとらえ、企業の社会的価値を創造し、そして社員のエンゲージメントを高め働き手の確保とパフォーマンス向上が重要になっています。
これまで当たり前と思っていたこと、過去の成功体験、既存の会社の文化を捨て、
多様性への理解と社会的価値の創造が求められています。

テーマ3 高信頼性組織(HRO)とは?

研究会では高信頼性組織を「複雑な技術システムを取り扱い、多様な関与者の要求の中で、わずかなミスやトラブルが大きな危機につながることになる組織が、絶えず変化する状況のなかで、「ダイナミックな無風状態」をキープしてミッションを果たす組織」と定義しました。

わかりやすく説明するとポイントは2つです。
1つはミスを隠さない組織風土を作ることです。
例えば原子力空母など複雑なシステムではわずかなミスが大きなトラブルに繋がりますよね。それを防ぐためには、小さなミスを隠さず、客観的に対応を考え、学び、成長する組織でなくてはなりません。もしミスを叱責することで規律を正そうとすると、ミスをした人は一層隠そうとし、隠蔽体質が組織として出来上がってしまいます。これでは逆に大きなトラブルに繋がってしまいますよね。
2つ目は皆がそれぞれの専門家で、何か問題が発生しても上司や責任者の判断を待たずに専門家が対応できる組織を作ることです。普段は穏やかで静かだけど何かトラブルが発生したら迅速に的確に対応する、これが「ダイナミックな無風状態」であり、この組織風土を作ることがポイントです。

《高信頼性組織を実現するためには?》
高信頼性組織を実現するための3要素は3つあります。
それは「ハンブルリーダーシップ」「心理的安全性」「知の交換の場」です。

ハンブルリーダーシップとは謙虚なリーダーシップのことです。
これまでの強い指揮官というリーダー像を脱却し、自分自身の弱点を認め、開示しながらチームをまとめていくことです。

心理的安全性とはミスをしても受け入れられ、そのことで個人を攻撃せずマイナス評価をされないことです。「誰が問題か」ではなく、「何が問題か」にフォーカスをあてる職場を作ることが重要です。

知の交換の場は、成長の機会となる失敗の経験の情報交換の場がリアル、バーチャルともにある職場のことです。そしてそこでは失敗の経験を共有し、研究的に分析し対策を立てる場であることです。

とは言っても、この実現は難しいですよね。
なぜ難しいのでしょうか。
それは無意識の偏見と行動のせいです。
「自分の意見」と思っていることも実は過去の呪縛に囚われコントロールされた見解になってしまうことがあるのです。

例えば…
・内集団バイアス=身内びいき
・確証バイアス=自分の信じることに固執して、それに反する事実を軽視したり無視する。
・出世バイアス=自分がここまで出世したのだから、自分の直観力は正しい
こんなバイアスがかかってしまい、正常な判断が出来なくなってしまいます。

リーダーがこのようなバイアスから陥りやすい認知的不協和をいかに排除するか。
自分のバイアスを意識してハンブルなリーダーとなり、チーム内に心理的安全性と知識交換の場を作ることが、これからのリーダーには必要なことなのかもしれません。

いかがでしたか。
今回は4つのテーマについて、参加者の皆さんは非常に多くの新しい発見があったセミナーになったのではないかと思います。

伊藤さん、ご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました!

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