【第6回JEAエンゲージメント協会】仕事・人生・家庭どこでも、イノベーションに挑む全ての人へ。イノベーションがひらめく、『リベラルアーツがもたらす力』開催レポート

第6回エンゲージメント研究会は内藤氏をお招きし、「イノベーションがひらめく、リベラルアーツがもたらす力」を開催しました。内藤氏自身がリベラルアーツについて学び始めた時に感じた感動や、その後の生かす秘訣を共有していただきました。

内藤博之プロフィール

マーケティング多国籍企業ユニリーバで、世界中のリーダーと共にマーケティングとマネジメントを培う。日本、インド、シンガポールでの活躍を経て、独立し、様々なグローバル企業にて、国境を越えてビジネスを展開するマーケター育成を手がける。

その中で、顧客の本音を捉え、新たな市場を生む、マーケティングは、ビジネスだけでなく、人それぞれが新たな価値を生み、前例に捉われない、その人ならではのライフキャリアを紡ぐ機会になると実感。

そこで、個人が自己実現にチャレンジする力が、企業や組織を成長させる機会を創ろうと、一人ひとり異なる新たな価値を生む人財育成・活躍支援を手がける、株式会社パスウィーヴを創業。

企業、NPO、個人に向けて、中学生からシニアまでにワークショップをデザインし、提供。個人の自己実現を支援しながら、組織が新たな価値を生み出す力を引き出す。立教大学で特任准教授として、グローバルリーダーシッププログラム(GLP)を提供するなど、年齢や分野を超えて、多様な人で学び合う場づくりをとファシリテーションに定評がある。

テーマ1 どんな世界に生きている?

まず初めに世界の現状と、未来予測に触れる映像を見て、それぞれが感じたことを共有することから始まりました。人口増加の変遷、温暖化への対策、ロボットの進化、アンドロイドの発展、そして先進国と新興国の子どもたちの生活の違い… どれも今変化の兆しが見え、これから起こり得る「答えのない問題」「まだ見ぬ未来の変化」を考える機会となりました。

そのような世界や社会では、「答えのない問題があふれている」ということを実感できたと同時に、個人としては、「なんとなく未来が不安」と感じる人が増えたり、企業経営者としては、「トップリーダーだって、未来を確約できない」と感じるのは、人として自然であると感じました。

それをきっかけに、「どんな世界に私たちは生きているのか」について、グループディスカッションを行いました。

参加者の皆さんからは、物事の移り変わりが早い・変化を楽しめる時代・不平等な世界で生きている等、様々な意見が出て、濃い対話ができました。

テーマ2 リベラルアーツとは? そこに秘められた可能性

言葉から辿ると、リベラルは自由、アーツは技術・学問・芸術。人にとって必要な義務教育的なものから出発したと同時に、それは、人を自由にする学問や技術や芸術を意味しているとのこと。そもそもは人間を自由にする学という自由七科で、言語に関する三科目、数に関する四科目のことだそうです。

続けて、「人が自由になること」について対話をしました。誰か一人の価値観ではなく、様々な人の考え方や捉え方を対話すること。そのような場を通じて、人が縛られている何かに捉われず、個人が自由になる可能性と取り組みを学びました。

そこで、人が自由になるということは、その人の創造性が解き放たれることでもあるという話がありました。人が自ら自由に考え、行動ができるようになることで、本来持つ「知恵」や「感性」から、新たな価値が生まれてくるものではないかという、対話がありました。

さらに、どんな仕事をしていても、人を取り巻く制度や仕組みの中で、個人は制約を受け、自然に持っている力や感性さえも、生かしにくかったり、自由な発想を生かす 機会が失われているという話に。個々人が、リベラルアーツを学ぶことは、そうした人が本来持つ力を発揮することにも繋がり、今を生きる私たちにとって、とても重要であるということでした。

テーマ3 私たちが考える、イノベーションとは?

イノベーションの定義から話が始まりました。イノベーションと聞くととても大きなものに聞こえるが、今、私達が生きている社会の中で、イノベーションを実現することは、すべての人が取り組めるチャレンジではないかという問いかけがありました。過去にどのようにイノベーションが生まれたのかを見ると、誰かの着眼点や発想から、行動を起こして生まれていました。

2つ目のグループディスカッションテーマは「あなたが”イノベートしたいもの“は何ですか?」でした。参加者から、家庭の話であったり、職場の話であったり、様々なことが挙がってきました。身近なことにも、こうなったら良いな、こうしたいなということが湧き上がってくるようでした。

その後、イノベーションの捉え方を広げる、新たな視点を得ることができました。例えば、新しい生産物の創出(プロダクト・イノベーション)や、新しい生産方法の導入(プロセス・イノベーション)という仕事に直結するものや、 新しい人生の実現(ライフキャリアイノベーション)、新しい自分自身の開拓(セルフイノベーション)など、生活に関わるものまで、視野を広げることができました。

しかし、これらは様々な要因によって阻害されるとのことです。仕事であれば、人との関係性、組織の仕組みや癖、そして、人が集団になった時の影響など、様々なことが立ちはだかることを学びました。また同時に、イノベーションを起こす時には、マインドセットだけでなく、その実現力と、それをリードする人の存在、リーダーシップなども重要になるという話がありました。

テーマ4 リベラルアーツに触れて、「凄い!」と感動した学科

1.人類史(人類の旅路)

人類史という視点で過去に遡ると、人類が徐々に長寿になってきていることも学べるとともに、人生100年時代に突入することが、近未来に起こることも想像できました。

同時に、近年の長寿化が人類史上前例がないという新たな発見も生まれます。これまで人がどのように生きてきたかを学ぶと、そのものから現代に通じる、新たな気づきを得られるという話がありました。

例えば、人類史を見ると、人がどうやって生きようとしたのか、コミュニティの作り方と関わり方、その結果どういう結果が起きたのか、そういったことがわかってくるということです。

私見として、内藤氏は、人類史を学んだことで、現在の組織の在り方も見えてきたと話されていました。会社の組織の在り方はヒエラルキーの会社もあれば、ホロクラシーやティール組織のようにヒエラルキーを変えようという会社も生まれている。それは、人がどのように人と組んできたのかにも繋がっている。

あるエンゲージメントが低下している会社社員の話がありました。 「こうすべき、やることを決めて皆もくもくと動いてよ」というリーダーの本音がある一方で、メンバーは「頑張りますと言っても忙しすぎる」「やることに集中したい」「自分に関係ないことは無視したい」といったことがあるとわかったと。

それは、ヒエラルキーの連携では起きがちなことであり、どのように手をとりあう組織を作るのかも鍵だと。「答えがないから皆の力を集めよう」というリーダーがいて、「個々の強みが発揮され、創造性で解決していこう」とメンバーが考え行動する組織は、ヒエラルキーの△より、チームで手をとりあう○のようだと学んだということです。

2.哲学と宗教

哲学のテーブルと宗教のテーブルという比較をもとに、それぞれへの理解を深めました。宗教は教祖や預言者の存在があり、物語と世界を結びつけているもの、哲学は出入り自由で問題提起を行い、議論や対話を行うものであると言った対比がありました。

グループディスカッションでは、「今、世界は○○な時代になってきている」と表現するなら、どう表現するか?というテーマで行いました。参加者それぞれの言葉で、時代の捉え方を対話することで、また、ひとえに、多様性な時代、予測不可能な時代と言われていることを捉えるのではなく、新たな見方がその場に生まれました。

3.芸術と発明

演劇は藝術の一つ。少女漫画やエンターテイメントのようにストーリーによって、登場人物の気持ちをすべて表現するのとは異なり、シーンごとに暗転し、聴衆自身に何が起きたのかを想像させる、人の想像を引き出す点に違いがあるそうです。

シーンとシーンの間を想像させることで、演劇が終わったときに、観客同士で対話を促すという効果もあり、それが一つの人の楽しみにもなると。例えば、演劇の演目として、現代の答えのないテーマを上演しているものがあり、そのような演劇は、聴衆に観劇の中、そしてその後に、自ら自由に考えるきっかけを創っていることを知りました。

演じる人も、見る人も、答えのないテーマに対して、人それぞれが考える体験になっていると分かってから、内藤氏は、その後に劇や映画なども見方が変わってきたと話されていました。

テーマ5 リベラルアーツを学ぶ価値と活用法

内藤氏にとっては、リベラルアーツを学ぶ価値は、「知識・情報としての教養」だけでなく、「思考ツール・意思決定の力」にもなるということを提示してくださいました。その気づきから、様々な活かし方があるのでは?と5つの活用方法を共有してくれました。

リベラルアーツを学び、気づき、行動することは、人が自由に発想し、行動をすることでもあり、人生を豊かにする大きな力だという話がありました。そして、学べば学ぶほど、日常で同じものを見ていても、気づくこと、見えることが変わってくると。

例として、日常で目にするモノやコトを写真で見ながら、皆で今日の時間を経てから見ると、どんなことに気づく?あなたにとってどんな行動が取れる?など、対話をしていきました。

実際に、最近話題になった広告、話題になった事件などを見たときに、

 それは、自分には関係ない?

 なぜそのようなことが起きる?

 それが起きるとしたら、何が自分はできる?

といったことを考えるきっかけになることに気づきました。

また、日頃は大きなテーマパークの2つとして捉えがちな、ディズニーランドとユニバーサルスタジオの違いを、文化的側面から見ると、大きな違いがあると言った、内藤氏にとってとても印象に残った気づきも共有してくれました。

あらゆる身近なことが、リベラルアーツを学ぶことで、見方が広がり、そこでの気づきで行動をすれば、世界が変わることにもつながると、参加者としても、一緒に感じることができました。

最後にイノベーションを起こす出発点とは「見えないものを見る力」であり、イノベーションを閃く力とは、人それぞれが持つ「好奇心」が大きな一つであると説明してくださいました。そして、 「誰もが持つ実現力」として、人それぞれ異なる才能にも触れられました。

好奇心を生かして、誰かに役に立つことそれが、人それぞれが生み出せるイノベーションであり、誰もが実践できるチャレンジであるということで、今回の研究会「イノベーションがひらめく、リベラルアーツがもたらす力」を締めくくっていただきました。

内藤さん、ありがとうございました。

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