JEAの考えるエンゲージメントとは?

英語の「Engagement」にはさまざまな意味合いがあります。日本人にとって一番なじみがあるのは、「婚約」でしょう。
エンゲージメント・リング(婚約指輪)という言葉は一般的に使われています。
哲学に興味のある人はジャン・ポール・サルトルの「アンガージュマン」を思い出すかもしれません。
これは「Engagement」のフランス語読みで、サルトルは「政治・社会への参画」という意味で使っていました。
他にも、「約束」「誓約」「交戦」などの意味があります。

アメリカ人の友人に聞いたところ、「Engagement」と聞いてまず思い浮かぶのは「歯車のかみ合い」とのことでした。
また、フランスの大女優ジュリエット・ビノシュが主演した「Disengagement」という映画のタイトルは、「撤退」と訳されています。

このように、さまざまな意味を持つ「エンゲージメント」ですが、90年代に「社員エンゲージメント」として人事や組織論の世界で重要視され始めました。
90年代半ばに開発されたギャラップ社の社員エンゲージメント・プログラムがその流れに拍車をかけました。
その後、多くのコンサルティング会社や事業会社が業績向上のための社員エンゲージメント・プログラムを推進し、
今では人事・組織・人材育成の世界では常識になっています。

それぞれの機関が独自の定義をしていますが、私たちは社員エンゲージメントを
「仕事を自分事と感じ、楽しみ、組織に貢献しようとする社員の自発的な姿勢・行動」と定義しています。
いわゆる「指示待ち」ではなく、自発的にもうワンランク上の仕事をしようとする姿勢・行動であり、しかもそこには「楽しみ」があるということです。

世界的に成果守義が広まり、リストラをする企業が増えた90年代に「社員エンゲージメント」の潮流がビジネス界で起こったのは必然であると私たちは考えます。

会社にこき使われ、肉体的にも精神的にも疲弊し、最後には切り捨てられる。
そんな経験をした人、あるいはそうなる不安を抱いた人は、組織で働く、ということについてシニカルになってしまいがちです。
もちろん、彼らには高い生産性が期待できません。各企業は、そんな状況を防ぐために、個人が自分と組織の成長のためにポジティブかつ自発的に仕事に打ち込む
「エンゲージメント」を確立したいと考え、その実現のために個人に対し適切な支援を行おうとしたのです。

当協会の代表理事の一人である小屋一雄は20年以上エンゲージメントの向上に携わってきましたが、「エンゲージメント」は小手先のテクニックでは向上しないということを痛感しています。また、エンゲージメントの向上には必要条件があるということにも気づきました。
それは、仕事に「意味を感じ」、組織の「価値観に共感し」、そして「自分ならではの貢献をする」ということです。

つまり、「意味」「共感できる価値観」「自分らしさ」なくして、社員意識調査の実施とフォローだけを一生懸命してもエンゲージメントは高まらないということです。
職場での業務だけでなく、視座を個人の人生観、価値観にまで高め、自分自身を見つめなければならないのです。

そこで、一般社団法人日本エンゲージメント協会では、仕事上のエンゲージメントだけにフォーカスするのではなく、
仕事と同時に各個人の人生にフォーカスしてエンゲージメントを高めることを提唱しています。

私たちは、職場での生産性にフォーカスした「ワーク・エンゲージメント」に加えて、
自分自身の人としての成長にフォーカスした「セルフ・エンゲージメント」
社会との関わり、社会貢献にフォーカスした、「ソーシャル・エンゲージメント」を総称して
「ライフ・エンゲージメント」と呼ぶことにしました。

仕事に熱中しながら、人として成長し、社会に貢献する。そして、そこから人生の充足感を得る。
そんな人たちは生き生きと仕事をし、組織の生産性も上がり、社会もより明るくなると考えています。

これまでのビジネス界の文脈の中でのエンゲージメントとは少しニュアンスが違うかもしれませんが、私たちはそこにエンゲージメントの本質があると信じ、
ライフ・エンゲージメントの向上を支援し続けようと思います。

(顧客エンゲージメントについては、現時点では当協会のフォーカスからは外すことと致します)

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